実際の仕事をもとに、博報堂と博報堂DYメディアパートナーズのチームワーク力の源泉を解き明かしていきます。
今回紹介するのは、放送局と密に連携を取り、新たなスキームを生み出すクラフトークチーム。従来のテレビビジネスにはない、新しいビジネスに挑むこのチームの中に「もしも自分がいたら」なんて、ぜひ働く自分を想像しながら読んでみてください。
Team
クラフトーク

放送局の系列をまたいだ異例の施策を実現
日本全国の放送局と連携し、各地のさまざまな商品を選定して、生産者や販売者が商品のこだわりを紹介するコンテンツを配信する、ライブコマースの新たな取り組みとしてスタートした「クラフトーク」。どのような経緯で誕生し、博報堂DYメディアパートナーズ、そしてテレビビジネスにとってどんな意義を持っているのか。
伊藤「クラフトークを最初に放送局に提案したのは2021年の4月頃。このライブコマースのコンセプトが商品を売るのではなく、“商品にかけるこだわりを売る”ってことだったので、当初は『KODAWARI』っていう名前で考えていて」
穂積「カッコいいなあ(笑)」
矢原「ロゴとかをつくっているとき、僕も見せてもらいましたよね。何パターンもあるなかで『矢原、どれがいいだろうか』って」
伊藤「ただ、商標を取る段階で弁理士の方から、『KODAWARI』だと一般的なワードすぎて取れないって指摘され、造語なら取りやすいと言われたのでいろいろ考えました。この取り組みのメリットは、地元のことを知り尽くしている放送局が商品を提供していることと、視聴者が地元の生産者や販売者のみなさんのこだわりをライブ配信で聞けて、買い手との双方向性があるところ。生産者のこだわりの部分を『クラフトパーソン』、双方向性の部分を『トーク』と捉えて、クラフトークという名称を思いつきました」
穂積「放送局の大きな収益ってCM枠を売ることで、僕たちはその枠を売ることが仕事になるわけだけど、コロナ禍をきっかけにそれが厳しくなった。放送局も新しい収益の柱を立てる必要にせまられていた状況が、クラフトークが生まれる背景にあったんだよね」
矢原「これからデジタル時代が進んでいくにあたって、放送局がBtoCとして収益にどうつなげていくのか。放送局が持っている映像制作力とか、地元のネットワークをフル活用してやっていきましょうってことを提案していったって、伊藤さんはおっしゃってましたよね」
伊藤「そうだね。地元を盛り上げることが放送局の役割としてあるなかで、コロナ禍によって大都市の百貨店などに、生産者のみなさんが出店できない状況を支援していきたいって部分にも、放送局が共感してくださったのが大きかったと思う」
穂積「ただ、立ち上げるまでを間近で見ていたけど、正直、大変そうだなって思っていた」
伊藤「全国に地上波の系列局だけでも114の放送局があって、局ごとに提案資料をつくり変えてプレゼンしましたから(笑)……」
矢原「CM枠以外で収益を上げていく方法は、常にみんなが考えていたと思うんですが、それをいち早くカタチにしてしまったんですから、すごいですよね!」
穂積「僕は高知県出身だけど、地元を盛り上げたいという気持ちはどこかにあって。だから、地元に帰ってクラフトークのCMが流れているのを見たときなんかは、伊藤のことを思い出して、改めてすごいなって思ったよ」
矢原「系列をまたいだ施策っていうのも大きいじゃないですか」
伊藤「視聴者を増やすため、なるべく多くの放送局に参画して欲しかったからね。普段は競合になる各局が連合体として取り組むメリットをつくるためのルールも提案した。予算と成果だったり、期限と品質の良いアウトプットだったり、クライアントと媒体社の考えだったり、「どう両立させるか」は広告の仕事で解決を求められる大きな課題だよね。(笑)逆にそれをどう仕切るかに僕たちがいる意義があると思う」

“クラフトークチーム”が
評価されたことが素直にうれしい
いよいよ本格的にスタートしたクラフトークに対して、世間や同業者はどんな反応を見せたのか。それに対して、チームのメンバーたちの胸に浮かんだ率直な思いとは?
矢原「2022年5月に、全国21放送エリアの22放送局が参加することでクラフトークは正式スタートしたんですよね」
伊藤「実際にスタートすると、放送局の方から『こんなのどうでしょう?』みたいに前のめりに提案してくれるようになって、商品が実際に売れて、生産者や販売者の方も喜んでくださって、ライブ配信にも視聴者の方からコメントがあふれて。その時には本当にうれしかったのを覚えているなあ。あと、社内からすごい刺激になったとか、同業者からほめられたのも、ちょっとうれしかった」
穂積「自分たちが先にやらなくちゃいけない施策だったって、悔しがっていた企業もあったって話も聞いたよ」
矢原「僕の場合、伊藤さんから業務を引き継ぐかたちでのスタートだったので、最初に放送局とミーティングをしたときは『こいつ誰だ?』っていう状態からはじまったんですが、だんだんと頼りにしてくれるようになっていったときはうれしかったです。配信でも、僕なりのアイデアを出したとき、放送局の方が理解を示して実践してくれて、実際に商品が売れたときとかは、さらにうれしかったです」
伊藤「ACCのメディアクリエイティブ部門でエリア&コミュニティ賞をとれたのも、めちゃめちゃうれしかった。僕らと放送局だけでなく、協力会社や地元の生産者、販売者のみなさんを含めて、“クラフトークチーム”として賞というカタチを残せたことは、本当に良かったです」
矢原「僕も別業務をやっていたとき、全然知らない放送局の方から『ACCとってましたね』って声をかけていただいたり、会社の先輩や協力会社の方から『クラフトークが賞とりましたね』って声をかけていただいて、受賞したときは『そうなんだ』ぐらいに思っていたのが、じわじわとうれしくなっていった感じです」
穂積「ただ、ACC受賞というわかりやすいカタチで評価いただいたのはうれしい反面、賞に負けない実績というか、今後も事業を継続していかなければいけないというプレッシャーも感じてはいて。だから、放送局や生産者、販売者の方たちと一緒に、地元を盛り上げながら収益を上げていくためにも、今後もこの事業を前向きに大きくしていって、みんなで喜べる未来をつくりたいと思ってます」

言語化し、共有できる力こそが求められている
現場の最前線で仕事に取り組んでいる3人の視点からは、博報堂DYメディアパートナーズはどのように見えているのか。そして、広告やメディアという仕事に向き合っていくために、どのような力が必要と考えているのだろうか。
伊藤「博報堂DYグループのフィロソフィーに『パートナー主義』ってあるけど、博報堂DYメディアパートナーズって、その名の通り媒体社と本当にパートナーになっていくじゃないですか」
穂積「そうだね。僕はビジネスプロデュース職(以下、BP職)から放送局の担当者に移ってきて、放送局ならではのフレンドリーさにカルチャーショックを受けたんだけど、そのおかげで全国に友達のように親しい存在ができたことは良かったと思うし、この会社で仕事をするおもしろさだと感じている」
矢原「僕もBP職から移ってきたので、穂積さんと同じくカルチャーショックでしたね。なんなら、仕事中に肩を組んでくるぐらいフランクな方も結構多いじゃないですか(笑)。 ただ、同じ系列の放送局であっても、隣の都道府県にいったらもう全然考え方や人となりが違っていたりしますよね。だから、BP職で仕事をしていた頃には比べものにならないくらい、いろいろな考え方をもった人や多くの協力会社のみなさんとつながれるようになったのは、ここにきて良かったと思えるところです」
伊藤「メディアの環境がすごく変化しているなかで、例えばクラフトークみたいに、新しいことをやっていくのを推奨されるのが僕らの会社なわけで、自分なりのアイデアを持っていて、パッションをもって伝えられる人には働きやすいよね」
矢原「そのうえで一緒に仕事をしたい人ってなると、何ごとにも疑問を持てる人だと、僕は思っています。これはこうだからこうって決めつけるのではなく、もっと柔軟に『これってなんだろう』って、疑問や好奇心を持って仕事にのぞめる人と一緒に仕事をしていきたいですね」
伊藤「僕は、自分の強みは何かって聞かれたら『周りに恵まれていること』って答えるんだけど、なかでも自分の意見を非常に高い精度で言語化できる人に対して、すごく刺激を受ける。自分の考えをみんなと共有できるように、的確な言葉に変換することって、広告の仕事ではとても大切だと思うんで、そういう人がいてくれたらうれしいですね」
穂積「僕は相手の立場を想像できるというか……。なんて言えばいいんだろう」
伊藤「先輩、ダメです。今、言語化できてない(笑)」
穂積「できてないな(笑)。真面目に話すと、例えばクライアントや媒体社の担当者が社内で誰に対して交渉するのかまで想像して、自分の言いたいことだけを言うのではなく、相手が交渉するためのロジックや材料を渡してあげるみたいな、パートナーとして一歩先を思いやることが大切かなって思うんだよね」
矢原「広くいうと“ホスピタリティ”ですかね?」
穂積「そうそう。そういう力って、我々の現場はもちろん、広告の仕事をしていくうえで重要だと思うので、そういう力を持っている人がもっと増えていってくれたらうれしいよね」

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