未来のレモンサワー
アサヒビール
試作段階から伴走した、
前例のない缶チューハイ
フルオープン缶の蓋を開けた瞬間、シュワッと湧き上がる泡とともに、本物のレモンスライスが浮かび上がる。その光景は、これまでの缶チューハイの概念を塗り替えるものだった。この「未来のレモンサワー」プロジェクトは、商品化できるかもわからないプロトタイプの段階から、アサヒビールの方にご相談いただき、博報堂が二人三脚で動き出したところから始まっている。
ネーミングもパッケージも何も決まっていない「青い缶」のプロトタイプから、商品開発、マーケティング戦略、コミュニケーション設計、そしてリスク管理までを一気通貫でプロデュース。クライアントと広告会社の垣根を越え、「この子を世の中に送り出す」という親のような覚悟で約3年にわたる試行錯誤を重ねたのだ。毎週の定例会議では、博報堂側も自発的にアイデアを持ち込み、商品そのものを一緒に育てていくという、通常の広告制作業務とは一線を画す進め方だった。
皆で汗をかき抜いた
受発注の関係を超えたワンチーム
2024年6月11日、「誕生、未来のレモンサワー」というコピーとともに、首都圏・関信越エリアで数量限定発売を開始した。一生に一度の“誕生”の熱量を最大化するために、エリア限定という希少性を設計し、SNSで大きなバズを生んだ。そして、「缶の中に本物のレモンスライスが入っているなんて」という驚きは、瞬く間に「次世代のスタンダード」への期待へと変わっていった。
テレビCMには人が一切登場せず、飲むシーンすらない。ただひたすらプロダクトの力を映像で届けるという異例の表現を貫いた。また、発売前にはレモン農園まで足を運んで安全性を映像で記録し、懸念の声が出る前に先回りしてメディアに発信するなど、広告の枠を超えた仕事も含めて、チーム全員で汗をかき抜いたプロジェクトであった。
構想段階からアサヒビールと二人三脚で伴走し、約3年かけて世の中を驚かすブランドを育て上げた「未来のレモンサワー」チーム。商品開発からリスク管理まで汗をかき抜いたこのチームの中に「もしも自分がいたら」なんて、働く自分を想像しながら読んでみてください。
Member
加藤 里佳子
PRプラナー
2021年新卒入社(6年目)
加藤 黎
ビジネスプロデューサー
2018年新卒入社(9年目)
松谷 拓哉
マーケティングプラニングディレクター
2018年新卒入社(9年目)
竹内 雅人
クリエイティブディレクター
2004年新卒入社(23年目)
Interview1
プロトタイプの青い缶から、
すべてが始まった
── 「未来のレモンサワー」プロジェクトの始まりについて教えてください。
加藤(黎)
始まりは2021年の秋頃でした。アサヒビールさんから「商品としてローンチできるかはわからないけれど、構想段階から一緒に参画してほしい」という異例のお声がけをいただいたんです。ちょうど僕がチームに配属されたばかりで、同期の松谷と一緒に、ミニマムな体制からスタートしました。
松谷
最初は本当に2人だった(笑)。そこから少しずつメンバーが増え、プロジェクトが今の形になっていきました。
加藤(黎)
プロトタイプが届いた日のことは今でも覚えています。パッケージもネーミングもない、青い缶を開けてみたら、中から本物のレモンスライスが浮かび上がってきたんですよ。純粋に「すごいものが来た」と興奮しましたね。
── アサヒビールさんとの長年の信頼が、このプロジェクトにつながったのでしょうか。
加藤(黎)
何十年もかけて先輩たちが築いてきた信頼があったからこそ、構想段階から声をかけていただけました。期待に全力で応えることで信頼が生まれ、次につながる。そのサイクルを途切れさせるわけにはいかないという責任感は、常にありましたね。
── アサヒビールさんとの向き合い方で意識していたことは?
竹内
当初は「缶の中にレモンを入れられるらしいけど、本当にできるかはわからない」というスタートでした。なので、受発注の関係ではなく、「この子を世の中に送り出すぞ」という気持ちで、みんな自由に議論していました。毎週の定例にそれぞれがアイデアを持ち込み、商品そのものを一緒に育てていったんです。
松谷
アサヒビールのマーケティング部の方々はマーケティングへの造詣が非常に深く、経験も豊富なので、僕たち博報堂にしか出せない価値を提供しなければというプレッシャーはありました。未来のレモンサワーは他のレモンサワー商品よりも単価を高く設定していく方向だったため、「高いモノが売れるとはどういうことか」といった本質的な問いを考え抜いて、一つひとつ信頼を積み上げていった感覚でした。
竹内
広告として見えている部分は、僕らの仕事のほんの5%くらいです。残りの95%は、製造工程の課題や流通調整、決裁サポートなど、普段の広告業務では見えない領域でした。アサヒビールの方々と一緒に汗をかいて、課題を一つずつ乗り越えていきました。
Interview2
「モノの力」で勝負する、
人が出ないCMという決断
── 表現でこだわったポイントを教えてください。
竹内
「圧倒的に異質なものにする」という点です。このプロダクトの新規性、「モノの力」で勝負するんだということには、最初からすごくこだわっていました。なので、CMには人が一切出ず、飲むシーンすらないんです。ただただプロダクトの力を届けるためにすべてをリアルに撮影することにこだわって、レモンスライスが浮かび上がる瞬間を長い時間をかけてひたすら撮り続けました。汗をかいたからこそ、生活者の心を動かす映像になったと思っています。
松谷
僕は「五感で楽しむレモンサワー」というコンセプトの言語化には力を注ぎました。この商品の本質を「五感」という言葉に凝縮できたことが、クリエイティブの土台になりました。
── 広告以外の領域でも何か取り組みましたか?
竹内
缶にレモンが入っていることをリスクと捉えられる懸念もありました。「衛生的に大丈夫なのか」「農薬はついていないのか」といった声が上がる可能性を、発売の2年前から想定していました。そこで発売の1年前にレモン農園まで足を運び、管理体制や安全面を映像で記録したんです。おかげで、発売と同時にメディアへ提供して、懸念の声が出る前に先手を打てた。地道な準備でしたが、この先回りがあったからこそ安心して発売日を迎えられました。広告的な仕事ではないけれど、こういうところまで全部一緒にやるのがこのプロジェクトの特徴です。
── ローンチ後の反響はどうでしたか?
加藤(里)
発売直後からSNSでトレンド入りするなど、すさまじい反響でした。おもしろかったのは、ブランド側からはレモンスライスの楽しみ方を特に発信していなかったのに、買っていただいた方が自分なりの楽しみ方を次々と見つけてくれたことです。コンビニのチキンにレモンを乗せて食べている人がいたりして。この商品の可能性を感じました。
加藤(黎)
発売日に第2弾CMの試写が終わって、編集室でTVを見ていたら、「未来のレモンサワー」の第一弾のCMが放映されていて、それをアサヒビールの方たちと一緒に見た瞬間は、「すべてがこの日のためにあったんだな」と思えました。
松谷
これは本当に偶然なのですが、僕が電車に乗っている時に中吊り広告を見たご夫婦が「あれ飲んでみたいよね」と話しているのを見かけたこともあって。自分が携わった広告が目の前で誰かの会話を生んでいるのは、学生の頃に夢見ていた「自分の仕事で誰かの日常が動く」という瞬間でした。
Interview3
目新しさから、
愛される「文化」へ
── 今後の展望や野望について教えてください。
加藤(黎)
目新しさだけで売れ続けるわけではありません。ブランドらしさを定着させ、愛されるブランドに育てることが必要だと感じています。個人的には、ゼロからブランドを作る経験ができたからこそ、もっとビジネスやブランドそのものをプロデュースできる人材になりたい、という想いが強くなりました。覚悟を持った人たちと様々な共創をしていくキャリアを歩んでいきたいですね。
松谷
今回の仕事を通じて、「ブランドを文化にしたい」と初めて思いました。生活者に直接提供する商品・ブランドを持たない博報堂だからこそ、クライアントの事業を通じて新しい文化を形成できる。そのおもしろさに気づかせてくれたのがこの仕事です。
── このチームだからこその強みを教えてください。
加藤(黎)
このチームは非常に風通しがよく、ポジティブな雰囲気でプロジェクトを進めることができました。最後はみんなの熱量でまとまる。一緒に汗をかく、チームアップこそがすべてだと教えてくれた仕事でした。
加藤(里)
このチームに限らずですが、いろいろな職種の人が一つのブランドを作り上げている。自分で自分を忙しくして、汗をかいて生み出したものが誰かの心を動かす。その醍醐味を味わえるのが博報堂のチームだからこその仕事です。
松谷
仕事で得た経験は、自分にたまります。この仕事は正解ではなく別解を生み出す仕事、それは属人的な側面もありますが、「この人だからできた」という仕事が生まれるんです。チームだからこそ、様々なスキルや経験を身につけたメンバーでベストなアウトプットを出すことができるのだと思います。
── 最後に、学生の皆さんへメッセージをお願いします。
松谷
就職活動では、嘘をつかない方がいいと思います。無理して会社に合わせても幸せになれるかわからない。自分の欲望や、やりたいことに素直になってほしいです。
加藤(里)
なにをするにも感謝すること。何か一歩を踏み出す時に、現状に感謝できていないと、見えるチャンスも見えなくなると思っていて。ぜひ大切にしてほしいです。皆さんと働ける日を楽しみにしています。
加藤(黎)
今の自分は、過去の延長線上にあります。過去の自分が何をしてきたか、今どう思っているかと丁寧に向き合うこと。そのプロセスにしっかりと向き合っていられれば、将来に必ずつながっていくと思います。
竹内
自分の欲望や欲求に素直でいいと思いますし、それを認めてくれる会社だし、そんな人がたくさん集まった会社が博報堂だと思います。決して自分を大きくみせる必要はなくて、自分がやりたいことをもった人と一緒に働けたらなと思います。
仕事の流れ
プロジェクトにおける職種の相関図
アサヒビール
ビジネスプロデュース職
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加藤(黎)
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ストラテジックプラニング職
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松谷
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クリエイティブ職
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竹内
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PR職
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加藤(里)
メディアプロデュース職
コンテンツプロデュース職
メディアプラニング職
1
プロトタイプ受領・チーム組成
アサヒビールの方からプロトタイプの缶を受け取り、博報堂側のチームを組成。商品化の可否も定まらない段階から、ビジネスプロデュース職とストラテジックプラニング職が伴走を開始した。
参加メンバー
2
商品開発
「五感で楽しむレモンサワー」というコンセプトのもと、ネーミング、パッケージデザイン、価格戦略、流通設計を並行して進行。毎週の定例でアイデアを持ち寄り、商品そのものを一緒に育てた。
参加メンバー
クライアントさんから宿題をもらうなんてありえなかった。毎週の定例に自分たちからアイデアを持ち込んで、商品を一緒に育てていく。受発注ではなくワンチームの実感がここにありました。
松谷
3
クリエイティブ制作
商品のよさを伝えるため、人が一切登場しないテレビCMを制作。SNSでの話題化を狙うとともに、リスク管理として安全面をアピールする動画も前もって制作。満を持して地域限定でローンチし、発売直後にSNSでトレンド入りした。
参加メンバー
発売前からメディアにていねいに説明し続けた積み重ねが、あの爆発的な反響につながりました。地道な仕事が報われた瞬間です。
加藤(里)
4
ブランド育成・継続施策
発売後もブランドの定着と成長に向けた継続的なコミュニケーションを設計。目新しさだけに頼らず、「愛されるブランド」として文化にすることを目指し、チーム一丸で取り組み続けている。
参加メンバー
発売はゴールじゃなくて、ここからが本当の勝負。今もずっとレモンスライスを撮り続けて、表現を磨き続けています。一つのブランドをチーム全員の熱量で育てていく。その積み重ねこそが、愛される定番への道だと思っています。
竹内
※社員の所属、職種、その他の全ての情報は本記事掲載開始日時点のものであり、現在の情報とは異なる場合がございます。
パッケージもネーミングもない「青い缶」を受け取ったあの日が、すべての始まりでした。何もないからこそ、自分たちで一緒に作り上げていけるおもしろさがありました。
加藤(黎)