Member
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ストラテジックプラニング職
渡邉 大和
ビジネスプラニングディレクター(ドットミーCMO)
2012年入社
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クリエイティブ職
大久保 日向子
コピーライター
2015年入社
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ビジネスプロデュース職
加瀬澤 力
ビジネスプラナー
2018年入社
Interview 1
商品開発の
“別解”を探して
Cycle.meプロジェクトの始まりについて教えてください。
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渡邉
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加瀬澤
商社である三井物産さんと広告会社である博報堂は、互いに異なる強みを持っています。博報堂はマーケティングやブランディング、クリエイティブに強みがあり、三井物産さんは逆に、素材調達や開発製造のモノづくり、流通・小売などの領域に強みがあります。
また、三井物産さんも博報堂も、さまざまな業界・業種に関するノウハウやネットワークを持っている会社です。いまは「食品」からスタートしていますが、「コスメ・トイレタリー」や「アパレル」などでの展開も将来的にはあり得るだろうという話をしています。そういった意味では、純粋に生活者の視点で「どういうブランドがもっと生活が豊かになるだろう」「どういう商品があったら世の中がもっと面白くなるだろう」から考えられるので、自由な発想ができる座組だなと思います。
Interview 2
組織も会社も超えて
“ワンテーブル”で議論する
最初に展開した商品は、どのように開発していったのでしょうか?
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渡邉
トレンドスコープなどを用いて生活者のニーズを分析するところからはじめたのですが、コロナ禍を経て、生活様式が大きく変化するなかで、1日の中での行動や気持ちの切り替え、生活のサイクルやリズムを整えるために食品を利用する人が増えていることに気がつきました。また、「睡眠の質の向上」や「ストレスの緩和」など、日々の生活シーンの中で多くの人が抱える悩みにアプローチできる素材や食品が増えてきているというトレンドもありました。
そこで、まずは食品から、ゆくゆくは食品以外のカテゴリーも含めて、朝・昼・夜のそれぞれの時間帯に合った商品をトータルで提案してくれるブランドがあったら、より良い生活サイクルや、その人らしいライフスタイルの実現をサポートできるのではないかと考えたのが、Cycle.meが生まれるきっかけでした。 -
加瀬澤
最初に展開したのは、タンパク質が20gとれる果汁入ドリンクの「フルーティプロテイン」、デスクワークの一時的な疲労感を緩和するGABAが入った「ワーキングクッキー」、睡眠の質の向上に役立つGABA入りミルク用スパイスミックス「ムーンミルク」の3商品でしたが、「プロテイン」「ストレス」「睡眠」は2020年の段階で既にトレンドスコープで“今後注目するべきキーワード”として挙がっていたものです。
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渡邉
トレンドスコープなどを用いて検討したい商品カテゴリーを決めた後は、博報堂、三井物産さん、三井物産グループの素材メーカーさんや開発メーカーさんを一堂に集めた商品企画会議を行いました。この各領域の専門家が“ワンテーブル”で議論をするスタイルを、ドットミーでは大事にしています。こうすることで、開発スピードが短縮できるだけではなく、イノベーションも生まれやすくなるのではないかと考えています。
例えば、Cycle.meのフルーティプロテインは、“たんぱく質が20gとれる果汁入ドリンク”という、いままで市場にほとんど存在しなかったプロテイン商品です。これは調達のプロから「値段がネックで日本では採用されてこなかったのですが、実はこういう高品質なプロテイン原料がある」という提案があり、それを受けて処方開発のプロが「この原料が使えるなら、ジュースみたいなおいしいプロテインドリンクがつくれる」、マーケティングのプロが「こういうデザインやブランドにすれば、値段が高くても手に取ってくれる人がきっといる」という提案をしたことによって生まれました。ワンテーブルで商品企画をすることで、普通なら見落とされていたであろう可能性がすくい上げられた1つの事例なのではないかと思います。 -
大久保
商品企画・開発と並行しながらブランドの議論も進めていきました。健康を軸にしたブランドですが、あえて機能や効果はあまり主張しすぎないようにして、生活になじむようなたたずまいを意識しました。業界のセオリーにとらわれることなく、生活者として手に取りたくなるものをチームで議論しながら、少しずつブランドの輪郭をつくっていきました。情報が整理され、デザイン化されたパッケージを通して、自分らしく前向きな健康をつくるコンセプトに共感していただけていると感じています。
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渡邉
健康やウェルビーイングの実現のためには“継続すること”が必要ですが、一方で忙しい現代人にとって“継続”は、至難の業でもあると思います。自分自身がまさにそうですが、ちょっとでも無理や我慢があるものは続かない。だから本当は、健康食品こそおいしくあるべきだし、ブランドやパッケージデザインも「自分にとって“いいこと”をしている」「前向きな選択ができている」という気持ちにさせてくれるものであるべきだと思います。
大久保さんに書いてもらったブランドパーパスのステートメントにもありますが、「好きだから食べる。気がつけば、カラダも暮らしも前を向いている。」というのが本来は理想なのだと思います。まだまだ道半ばで実現できていないことも多いですが、そういうブランドを目指していきたいと思っています。
このプロジェクトの特筆すべき点はどんなところだと思いますか?
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大久保
クライアントと博報堂という線引きがないところだと思います。通常の業務であればコピーは"提案"するものですが、このプロジェクトの場合は納得できるものをみんなでつくり上げているような感覚があります。
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加瀬澤
渡邉さんも仰ってましたが、所属する会社の違う人たちが、職種や肩書きなど関係なく同じ立場でプロジェクトに関わっていて、ワンテーブルでディスカッションする文化があることです。お互いリスペクトしているからこそ、より良いものを一緒につくることができるのだと思います。
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渡邊
Cycle.meは商品開発から販売まですべて含めて考えると10万人を優に超えるような方々にお力添えいただいているプロジェクトになっていて、もう本当に感謝しかないですし、その分、責任の大きさも強く感じます。
また、「通常ならNGなのですが、何とか交渉してみます…!」と無理難題にも前向きに付き合ってくださる方が本当に多くて、ありがた過ぎて泣きそうになる場面が何度もありました。「企業という枠を超えて一緒に挑戦してくれる仲間ができるなんて、そんな甘い話あるわけない」と内心どこかで思っていたので、仕事観や人生観が変わるくらい大きな経験になっています。
Interview 3
イチ“生活者”であることが
強みになる
前例のない仕事だからこその印象的なエピソードはありますか?
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加瀬澤
炎天下で5,000本の商品をサンプリングしたことがありました。在庫を持つことや、1円を稼ぐことの大変さを知りましたね。そんな体験をしながら、違う会社の人同士があれこれ一緒に考えていくことで、本当の仲間になっていったなと感じます。
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大久保
私はコピーライターとして、ブランドの軸となるコンセプトの策定から参加しました。通常は製品の中身を動かせない状態で業務が始まりますが、このプロジェクトは構想段階から議論に入ることができる。フラットに試食会にも参加できるので、プラナー視点と生活者視点、両方をフルに活かせるプロジェクトだと実感しています。
ブランドの立ち上げから参加させてもらっている分、思い入れも強くて、街でCycle.meを選んでいる人を目にした時はちょっと感動しました。 -
渡邊
私は博報堂から出向し、現在はドットミーの中で働いていますが、今まであまり付き合いのなかった研究職や技術職の方々とも接する機会が増えました。議論が白熱してくると専門用語が飛び交い始めて完全に置き去りにされることもあったりするのですが、でも同時に、そういった職種の方々こそ、実は生活者発想やマーケティングの知見を欲していることに気が付きました。「生活者が何を求めているのか?」「どうしたら受け入れてもらえるか?」は、バリューチェーンのどの段階においてもやはり一番大事な“問い”なんだなと。職種はもちろんのこと、組織や会社も越えて、もっともっと多くの人とつながることで、生活者にとって本当に価値のあるものを生み出していけたらいいなと思っています。
最後に、学生の皆さんへメッセージをお願いします。
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加瀬澤
わからないことや、できないことは誰にもあります。たとえ間違っていても、思ったことや、やりたいことを素直に伝えるのが大切です。そういう素直な人が成長するし、チームを成長させると思っています。なので、素直さを大切にしてください。
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大久保
いざ仕事をしてみると、想像とのギャップに戸惑うこともあると思います。 でももしかしたら、目の前の仕事が、もっとワクワクできる仕事のきっかけになるかもしれない。そんな風にとらえられる人は、素敵だなと思います。前向きな人は、きっといい縁を引き寄せます。
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渡邊
この仕事に限らず、博報堂はいままさに新しい可能性を模索している真っ最中です。その意味では、“生活者発想”や“クリエイティビティ”といった何処でも通用する一生錆びないスキルを身に着けながらも、従来の広告会社の枠にとどまらないようなチャレンジも望める環境なのではないかと思います。新しいことに挑むというのは楽しいことばかりではなく、大変なことも多いですが、それでも「やりたい!」という人には、一つの理想的な環境ではないかと思います。
もともとは三井物産さんが出資する英国のBlack Swan Data社のAI予兆解析ツール「Trendscope(以下、トレンドスコープ)」の日本国内企業への導入を、博報堂がパートナーとして一緒に進めていたのがきっかけでした。ともにプロジェクトを進めていくなかで、「三井物産グループ、博報堂DYグループが持つ資産をフル活用すれば、予兆解析ツールを売るだけではなく、予兆解析から商品企画・開発製造・テスト販売まで一気通貫で提供できるのではないか?」「それってもしかしたら、自社での商品開発で苦しまれているクライアントさんにとって、商品開発の“別解”になり得るのではないか?」ということに気がつきました。
実際、多くのメーカーさんと議論させていただくなかで、「新カテゴリに参入したいんだけど、知見が無くて困っている」「おもしろいシーズや技術があるんだけど、どうやって商品やブランドにしたらいいのかわからない」「いまある設備や販路が大きすぎて、小さく生んでゆっくり育てていくこと自体が難しい」「社名やブランドが逆にハードルになって、チャレンジングな企画が通らない」「お“カネ”はあっても“ヒト”がつけられないから、新しいプロジェクトを動かせない」など、新商品の自社開発に関するさまざまな悩みを耳にしました。
三井物産と博報堂で「0→1」「1→10」のインキュベーションの部分のお手伝いをし、「10→100」でまたクライアントさんにお戻しするようなエコシステムがつくれたら、そうした悩みの解決ができるのではないか。「構想は面白そうだから、まずは自分たちで実際にブランドをつくってみよう」ということになり、最初につくったのがCycle.meです。Cycle.meがうまくいったので、三井物産さん、プレイドさん、曽田香料さんと博報堂が出資参画して設立したのが「株式会社ドットミー」になります。