どんな社会をつくりたい?:答えのない道徳の問題 どう解く?

マクドナルドのハッピーセットで展開された絵本が話題となった。博報堂が企画した「答えのない道徳の問題 どう解く?」(ポプラ社)とコラボレーションした絵本だ。「どうして正義のヒーローは、悪者を殴っていいんだろう?」、「国と国のケンカは、どうして怒られないんだろう?」。大人でも返答に困るような、シンプルでグッと突き刺さる言葉たち。いま「どう解く?」は日本全体の半分にあたる小学校図書館に導入され、学校の授業で使われたり、企業に採用されたりと、大きな拡がりを見せている。

答えのない道徳の問題 どう解く?/ ポプラ社​

企画の発端は「親になったから」。子どもと関わりがある事件や、いじめなどの問題……。同じく子どものいる同僚たちと子育てや教育についての不安を話し合い、自分たちも何かできないかと考えるようになった。大切なのは、子どもと親が一緒に話し合い、考えることだ。そのためには、いつでも一緒にページを開ける絵本がいい。手探りの状態で出版社のポプラ社と話す機会を得た。当日、持って行ったのは、3つの問いにそれぞれイラストを描いたものだけである。反応は「シンプルでズバッと本質に迫るのがおもしろい。やってみましょう」だった。

1テーマに1つの問い。嘘、平等、正義、家族、ジェンダーなど13のテーマを考えた。制作が進むにつれ、これらのテーマはすべて道徳の問題だと気づいた。そこで、タイトルは「答えのない道徳の問題 どう解く?」とした。完成した絵本は、さまざまな流れをつくり出し、親子だけでなく教育現場を中心に大きく拡がっていった。その流れは企業にまで拡がり、マクドナルドとのコラボレーションが実現する。子どもの発想力や思考力を高めるハッピーセットのフィロソフィーと一致したのだ。「みんなで!どう解く?」は、その名の通り、本自体を子どもたちみんなとつくっていった。

「みんなで!どう解く?」がハッピ−セットの本として販売されると、多くの親子が「どう解く?」の世界をお店や自宅で体験した。さらに授業キットを制作すると、全国の小学校で授業に採用された。子どもの親としての思いが原動力となり、自主提案を通じて出版社を動かし、カタチになったものが教育現場や企業、社会までを動かし、さらに新しいものをつくり出していく。企業や商品の課題だけではなく、社会の課題まで。広告会社の社員としての目、ひとりの生活者としての目、両方が合わさってこそ実現できる解答があるのだ。