どんな暮らしをつくりたい?:デカボスコア
博報堂/SIGNING/博報堂ケトルと三井物産による共同事業の一環である「Earth hacks(アースハックス)」が、新サービス「デカボスコア」を始動した。「デカボスコア」とは、「商品のCO2排出量をどれだけ削減できたか」を表す新しい基準である。脱炭素社会への動きは世界中で加速しているが、日本では定着したとは言い難い。発案者は、漠然とした“エコ”ではなく、脱炭素への貢献度をわかりやすい数値で示すことで、生活者の行動を変えていけるのではないかと考え、今回のプロジェクトに挑んだ。
意識したのは、商品やサービスにおけるCO2e(※)排出削減率への「貢献度」を見える化すること。通常、CO2の排出削減量は「◯kg」と表されるが、脱炭素アクションの土壌が育っていない日本ではその大小を実感しづらい。そこで、スウェーデンのインパクトテック企業・Doconomy社などと協業し、私たちが見慣れている消費カロリーやバーゲンセールと同じように「○%オフ」という数値でCO2e排出削減率スコアを算出した。生活者は自分の脱炭素への貢献度が見えることで納得・共感のうえで、これまでと異なるアクションを取るようになると考えた。デカボスコアを通じて、自分が使っている商品やサービスへの新しい気づきを与え始めている。共創にあたっては、三井物産のグローバルネットワークを活用し、世界中の企業と商談を重ねた。取り組み先からは「生活者の行動変容」という博報堂及び博報堂グループの強みを評価され、約3,000社の顧客ネットワークにも強い期待が寄せられた。
※CO2eとは、CO2 相当量に換算した値のこと
家庭におけるCO2排出量は全体の61%を占めるといわれるが、日本では個人単位での脱炭素アクションはさほど進んでいない。その理由は「関心はあるが、何をしたらいいかわからない」「流行のひとつに思える」というものだ。政府の目標は、2030年までに温室効果ガス排出量を46%削減すること。生活者の感情に訴え、脱炭素アクションに導くために必要なのは「やらなくてはならない」という義務感ではなく、楽しい・嬉しいといった本能的な欲望に応えつつ、思わず応援したくなる「欲望×ストーリー」だった。これまで関心のなかった人を振り向かせ、アクションにつなげるしくみ。そこには、売り手よりも生活者の心に寄り添うコミュニケーション設計が求められる。
現代は、ソリューションやテクノロジーだけに頼る時代ではない。生活者の欲望や心の内を理解し、ときには緻密なデータをもとに、エモーショナルに効果的なクリエイティブに落とし込んでいく。その計算された一連のコミュニケーションによってのみ、感情を刺激し、行動を変えていくことができる。それは、生活者発想を大事にしてきた博報堂にしかできない仕事。プロジェクトを通じて、一人ひとりの行動を変える。その積み重ねが、脱炭素社会の実現という大きなアクションにつながっていく。